【喫煙は歯にも不健康】
喫煙と受動喫煙により健康被害を受けてしまうことはよく知られます。WHO(世界保健機構)は先進国の病気と死亡の最大の原因がタバコにあると報告しており、当然、口の中の健康を害する要因の一つにもなっています。
喫煙と歯周病は密着に関連しています。口腔、特に歯周組織は、能動喫煙だけでなく受動喫煙・三次喫煙でも、直接悪影響を受けてしまいます。
【様々な悪影響】
① 口臭:口臭がきつくなる
② 歯周病の発症・増悪:最大の危険要因。発見の遅れ、進行促進(重症化)、再発しやすい
③ ガンの発生率が高くなる:口腔、咽頭ガンの発生率が高くなる
④ 身体への影響:血管を収縮させる、免疫細胞の働きを低下させる。骨の生成バランスが崩れ、骨粗しょう症を起こしやすくなる。
⑤ 着色:歯や歯肉がヤニで汚れる。
【タバコはなぜ歯に悪いのか】
タバコに含まれているニコチンなどは、口の中はもちろん身体全体の欠陥を収縮させます。血管が収縮すると、血流が悪くなってしまうので、歯ぐきに十分な酸素や栄養素が供給されません。
また喫煙により、白血球の機能が大幅に低下し、歯周組織を細菌から守る力が弱くなり、細胞の回復力にも影響を与えます。
タバコに含まれている成分が唾液の分泌量を低下させたり、歯垢(プラーク)や歯石を付着しやすくし、歯ぐきの血行を悪くさせる為、歯周病(歯槽膿漏)にかかりやすくなります。
この歯周病が口臭の原因の一つとなるのです。
【禁煙と歯周病】
喫煙は糖尿病と並んで歯周病の二大危険因子のひとつで、喫煙と歯周病は密接に関連しています。歯周病は虫歯と異なり、それが「歯肉炎」の状態ですが、多くの場合痛みもなく、進行がゆっくりしているため、気づくのが遅くなり、症状が悪化しがちです。
歯周病の発症には、大きく分類すると「細菌因子」、「環境因子」、「生体因子」の3つの要因があります。
【喫煙で歯周病を発症】
喫煙習慣は、歯周病を発症・増悪させる最大の危険要因の一つです。
喫煙者は、非喫煙者に比べて重度の歯周病にかかる確率が5-7倍も高いといわれています。
【喫煙が歯周病に与える影響】
喫煙が歯周病に与える影響は3つに分けられます。
第一の影響は、喫煙者は免疫が落ちる為、細菌が原因の歯周病にかかりやすくなってしまいます。
第二の影響は、出血などの自覚症状が出にくく、気づいた時には重症化してしまうことが多くなる点です。これは、ニコチンの毛細血管収縮作用により本来の炎症症状が隠されてしまうためです。
第三の影響は、喫煙者の歯ぐきはニコチンの影響でゴツゴツと硬くなってしまう点です。
こうなると歯周病治療が難しい事や、歯ぐきの治癒能力が落ちているため、非喫煙者と同じ治療をうけても喫煙者の方が効果が現れにくくなります。
【歯周病を引き起こす「三大有害物質」】
喫煙により、一酸化炭素・窒素酸化物・ニコチン・タール・ヒ素など数多くの有害物質が影響していると言われています。その中でもニコチン、タール、一酸化炭素は「三大有害物質」と呼ばれています。
ニコチン・一酸化炭素・タールなどが歯肉の毛細血管を収縮して、その影響で、歯肉の血液が循環不良となり血管中の白血球が持つ免疫機能や治癒力を弱めることになります。
ニコチン
タバコに含まれているニコチンは、精神作用を持つ物質で、「毒物及び劇物取締法」に明記されている毒物でもあります。
ニコチンの作用は、脳の中枢神経系や胃の収縮力を低下させ、吐き気などを起こしたりします。また、血圧上昇、末梢血管の収縮などがあります。
一酸化炭素
タバコの煙に含まれている一酸化炭素は、妊娠時の胎児への影響や虚血性心疾患・末梢動脈疾患・慢性呼吸器疾患などを誘引します。
タール
喫煙時に生ずるタールには、多くの発がん性物質が含まれています。
タールは呼吸器系疾患やガンと関係が深いと考えられています。
一日20本喫煙している人は1年間でコップ一杯分のタールを飲んでいるのと同じと言われています。
「歯周病」とは、歯の周囲に付着したプラーク(歯垢)が歯と歯肉の隙間に入り込み、歯を支えている骨を溶かしてしまう病気です。
プラークには非常に多くのバクテリアが含まれていて、そのバクテリアの出す毒素が歯肉に炎症を起こし、そして歯を支えている骨を溶かすのです。歯周病は歯を失うだけでなく、心臓病や糖尿病などの全身疾患にも悪影響を与えています。
「歯肉炎」は、歯茎が腫れるなどの症状を言いますが、「歯周炎」は、骨にも炎症を起こし、そのうちに歯の骨が痩せ、歯がぐらつき始めます。
【歯肉炎】単純性歯肉炎、妊娠性歯肉炎、壊死性潰瘍性歯肉炎
【歯周炎】成人性歯周炎、早期発症型歯周炎、思春期前歯歯周炎、若年性歯周炎、急速進行性歯周炎
【喫煙】
喫煙していると血流が悪くなり、歯周病が進みやすくなります。いったん炎症が起きてしまうと治りづらく、プラークも付きやすくなり、歯肉の色も黒ずんでいきます。
【糖尿病】
身体の抵抗性が低下するため、歯周病を急速に悪化させると言われています。
【女性の思春期、妊娠、更年期】
女性ホルモンの影響で歯肉に炎症を起こしやすいと言われています。
【ストレス】
ストレスにより歯ぎしりなどをしたり、身体の抵抗力が低下して炎症を起こしやすくなると言われています。
【口呼吸】
口で呼吸をしていると、口の中が乾燥しやすくなり、炎症を起こしやすくなると言われています。
【食生活】
やわらかくて甘いものばかり食べているとプラークができやすくなり、偏食すると栄養摂取が不十分になり身体の抵抗力が低下します。
【悪い歯並び】
歯ブラシが十分に行き届かなくなって、プラークがつきやすくなります。