肝臓の機能

肝臓には、「栄養素の代謝」「有害な物質の解毒」「胆汁の合成・分泌」の3つの機能があります。

 

1.代謝機能

●糖質の代謝

体の機能が円滑に働くために欠かせないエネルギーの供給と、血液中の糖分の調整をします。

 

●たんぱく質の代謝

代表的なのはアルブミンと血液凝固因子です。アルブミンは血管から水が染み出すのを防ぎ、血管凝固因子は出血した血を固める働きがあります。

 

●糖質の代謝

コレステロールやリン脂質、中性脂肪を合成します。

 

2.解毒作用

アルコール・薬物・アンモニアなど体に有害な物質の分解、処理して無毒化します。

 

3.胆汁の合成

肝臓で処理された物質が胆汁として、いったん胆のうに蓄えられ十二指腸から分泌されます。また、胆汁は脂肪・ビタミンの吸収を助けます。

肝臓は「沈黙の臓器」と言われ、予備能力が大きく、多少の障害では症状が現れません。自覚症状が現れた時には、かなり進行していることが多いので、定期的に検査を受けることが大切です。

肝臓病について

肝臓病の80%はウイルス性肝炎です。

 

日本人の肝臓病の約80%は、肝炎ウイルスが関与しています。

ウイルス性肝炎は、ウイルスによってA型・B型・C型などがあります。

 

① A型肝炎

食事により感染する一過性の急性肝炎。慢性化はしませんが、重い劇症肝炎になる場合があります。

発症後6カ月以内に治ります。

 

② B型肝炎

輸血などで感染。成人後は一過性が多く、慢性化や劇症肝炎になる事もあります。母子感染の場合は、ウイルス保菌者となり、肝硬変、肝細胞がんに進行することがあります。

 

③ C型肝炎

輸血などで感染。大部分は慢性肝炎に移行します。慢性化すると肝硬変、肝細胞がんに進行する場合が少なくありません。

 

④ その他の肝臓障害

アルコールの飲むすぎによる「アルコール性肝炎」や薬や肥満が原因の肝障害があります。


肝臓病の主な症状

肝臓病の特徴的な症状

肝臓病にかかると、一般的な症状として頻繁にみられるのが「疲れやすさ」「全身のだるさ」です。

次いで多いのが「食欲不振」「腹部膨満感」です。

 

以下の症状が現れたら、肝臓疾患がかなり進行しています。すぐに専門医の診断を受けましょう。

① 黄疸(おうだん)

肝臓の障害が起きてビリルビンの処理が低下したり、胆汁の通り道になる胆管が何らかの原因で塞がられると、血液中にビリルビンが増加します。その結果、ビリルビンの黄色い色素が皮膚や目の結膜に沈着し、黄疸が現れます。

 

② 腹水(ふくすい)

腹水は肝硬変の特徴的な症状ですが、重症の急性肝炎にも見られます。肝臓でのアルブミン合成低下によって、水分が血管から漏れやすくなり、腹水を生じます。

 

③ 肝性脳症(かんせいのうしょう)

消化管由来の毒性のある有害物質が解毒できないので、意識障害を起こします。

 

④ 血液凝固異常(けつえきぎょうこいじょう)

重症の肝疾患の場合、血液の凝固因子の生成が低下するので、出血傾向が出て、皮膚に皮下出血が現れたり、出血がなかなか止まらないこともあります。


歯科治療での注意事項

患者さんで肝炎ウイルスのキャリアの方や現在、何らかの肝疾患にかかっている場合は、必ず初診時に歯科医院にお伝えください。

 

歯科治療での注意事項

① 院内感染を防止します

歯科治療では、抜歯以外にも歯石除去などでも出血を伴う処置が多くあります。ウイルス性肝炎では、血液・唾液感染のおそれもあるので、事前の予防策を講じます。

●歯科医師、アシスタントはマスク・手袋・帽子・防護用メガネをします。

●使用する器具(コップ・エプロンも含む)は、できるだけディスポーサブルにして、消毒・滅菌を徹底します。

 

② 止血しにくくなります

肝障害が重度になると、血液凝固因子の減少で、外科処置後に出血が止まりにくい状態になる事があります。普段から、口の中は健康な状態を保つように十分な手入れをして下さい。

●抜歯は最初に容易な歯を抜歯し、止血状態を確認してから他の処置を行います。

 

③ 傷が治りにくくなる傾向があります

肝障害によって赤血球・白血球の破壊を進めるので、貧血や感染症を起こしやすくなります。また、タンパク合成能の低下でアルブミン量が少なくなるので、傷が治りにくくなる傾向があります。

●なるべく生体に対するダメージの少ない治療方針と感染予防を心がけます。

 

④ 薬が効きすぎます

肝臓での薬物代謝・解毒機能が低下するので、薬が効きすぎたり、副作用が強く出たりすることがあります。また障害のある肝臓の希望をさらに低下させることもあるので、内科の主治医と相談して薬はできるだけ避けるか、用量を減らすようにしてください。


肝臓病と歯科治療Q&A

Q 肝硬変ですが、歯科治療は受けられますか?

A 肝硬変は、肝臓病が慢性手かして肝実質の破壊が進行してくるために、肝機能がしだいに悪くなってくるものです。

歯科治療の苦痛や、投与された薬剤によって症状が悪くなったり、不快な症状が起きることもあります。

しかし、肝細胞の再生を助ける高カロリー高タンパクの食事を摂取できるようにするために、歯科治療を行って咀嚼力をつけることは大切なことです。

内科主治医に相談して、歯科治療時の注意を聞いておきましょう。


Q 「肝炎ウイルスのキャリア」と言われましたが、歯科治療はできますか?

A 肝炎ウイルスに感染しても肝臓に炎症が起こらない方がいます。B型・C型肝炎ウイルスではウイルスが肝細胞の働きを損なう事無く、うまく共存する場合があるのです。このように、肝炎ウイルスに感染しても発症せず、ウイルスを保有している事を「無症状性キャリア」といいます。キャリアの方が歯科治療を受ける事は全く問題ありません。

但し、ウイルス性肝炎は感染症ですので、歯科治療の際に適切な感染予防対策・消毒法を講じないと、歯科医療に従事する人や他の患者さんに感染させる恐れがあります。

受診の際には歯科医師に必ず申し出るようにして下さい。